2026年7月31日、出入国在留管理庁は「第2次出入国在留管理基本計画」を公表しました。この基本計画は、今後の日本における外国人政策の方向性を示す重要な文書であり、在日外国人とその家族、そして外国人材を雇用する企業にとって、実務上大きな影響を与える内容が含まれています。

本記事では、今回公表された基本計画の主要なポイントを整理し、ビザ申請・在留資格申請の実務にどのような影響があるのか、企業と外国人が今後どのように対応すべきかを、専門的見地からわかりやすく解説します。


1. 「第2次出入国在留管理基本計画」とは

出入国在留管理基本計画は、出入国管理及び難民認定法に基づき、法務大臣が策定する中長期的な外国人政策の指針です。今回公表された「第2次基本計画」は、前回の基本計画を踏まえ、社会情勢の変化や新たな課題に対応するために策定されました。

この計画は、以下の3つの柱を中心に構成されています。

  • 適正な出入国及び在留管理の実現
  • 外国人との共生社会の実現
  • 不法滞在対策の強化

これらは、単なる政策の羅列ではなく、今後の入管行政の実務運用に直接反映されるものであり、ビザ申請や在留資格更新の審査基準、必要書類、審査期間などにも影響を及ぼす可能性があります。


2. 主要な政策変更:4つのポイント

(1) 電子渡航認証制度「JESTA(ジェスタ)」の導入

今回の基本計画で特に注目されるのが、電子渡航認証制度「JESTA」の導入です。これは、入国前に渡航目的、滞在先、連絡先などの情報を電子的に確認する制度で、米国のESTA(エスタ)やカナダのeTAに類似したシステムです。

実務への影響

  • 短期滞在(観光、商用など)を目的とする外国人が対象となる見込み
  • 事前に渡航情報を登録することで、入国審査がスムーズになる
  • ビザ免除国からの渡航者も、事前登録が必要になる可能性
  • 企業が海外から招聘する場合、事前のJESTA登録を確認する必要が生じる

この制度により、入国審査の効率化と安全性の向上が期待される一方、企業の人事担当者は、海外からの出張者や研修生の受け入れ時に、JESTA登録の有無を確認するプロセスを追加する必要があります。

(2) マイナンバーを活用した情報連携の強化

行政機関間でのマイナンバーを活用した情報連携が強化されます。これにより、在留資格に関する情報が、税務、社会保険、労働関連の各機関と共有されやすくなります。

実務への影響

  • 在留資格の適正管理が容易になる
  • 不正な就労や虚偽申請の発見が迅速化される
  • 企業は外国人従業員の在留資格と業務内容の一致をより厳格に管理する必要
  • 在留資格変更や更新時に、過去の就労履歴や納税状況が審査に反映される可能性

特に、就労系在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能など)を持つ外国人を雇用する企業は、資格外活動や不適切な業務配置が行われていないか、改めて確認することが重要です。

(3) 在留外国人への支援強化:共生社会の実現

今回の基本計画では、「共生社会の実現」が明確に打ち出されています。具体的には、在留外国人に向けた多言語での情報発信、相談窓口の充実、生活支援サービスの拡充などが盛り込まれています。

実務への影響

  • 外国人が行政サービスを利用しやすくなる
  • 企業にとっても、外国人従業員の生活サポートが容易になる
  • 地域社会との共生が促進され、外国人の定着率向上が期待される
  • 企業の社会的責任(CSR)として、外国人材の生活支援体制の整備が求められる

企業は、外国人従業員が安心して働ける環境を整えることで、優秀な人材の確保と定着につながります。多言語対応の社内相談窓口の設置や、生活サポート情報の提供などが、今後の人材戦略の重要な要素となるでしょう。

(4) 不法滞在対策の厳格化

基本計画では、不法滞在者への対応として、速やかな送還の実施、摘発強化のための体制整備が明記されました。

実務への影響

  • 在留資格の期限管理がより厳格になる
  • オーバーステイや資格外活動への摘発が強化される
  • 企業が外国人を雇用する際の在留資格確認義務がより重視される
  • 不法就労助長罪のリスクが高まる

企業は、外国人を雇用する際に、在留カードの真偽確認、在留期間の管理、資格に応じた業務内容の適正化を徹底する必要があります。万が一、不法就労が発覚した場合、企業も不法就労助長罪として刑事罰の対象となる可能性があります。


3. 企業が今すぐ実施すべき5つの対応

(1) 外国人従業員の在留資格を再確認する

全ての外国人従業員について、以下を確認してください。

  • 在留カードの有効性(偽造・変造でないか)
  • 在留資格の種類(就労可能な資格か)
  • 在留期間(更新時期が近づいていないか)
  • 就労制限の有無(資格外活動許可の要否)

(2) 業務内容と在留資格の一致を確認する

特に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ従業員が、単純労働に従事していないか確認してください。在留資格と業務内容が一致していない場合、資格外活動となり、更新不許可や在留資格取消の対象となります。

(3) 在留期間更新のスケジュールを作成する

在留期間の満了日を一覧化し、余裕を持った申請スケジュールを組んでください。更新申請は、在留期間満了日の3か月前から可能です。直前の申請は、審査が間に合わず、就労できない期間が発生するリスクがあります。

(4) 社内体制の整備

人事部門に外国人雇用管理の専任担当者を配置し、以下の体制を整えてください。

  • 在留資格管理システムの導入
  • 多言語対応の相談窓口の設置
  • 外国人従業員向けの生活支援情報の提供
  • 定期的な在留資格研修の実施

(5) 専門家との連携

ビザ申請や在留資格に関する専門知識を持つ行政書士や弁護士と連携し、定期的に社内の外国人雇用状況をチェックしてもらうことをお勧めします。法改正や運用変更に迅速に対応できる体制を整えることが、リスク管理の基本です。


4. 在日外国人が今すぐ確認すべきこと

(1) 在留期間の残り日数を確認する

在留カードを確認し、在留期間の満了日を把握してください。更新申請は3か月前から可能ですが、できるだけ早めに準備を始めることをお勧めします。

(2) 現在の在留資格が適切か確認する

転職した場合、業務内容が変わった場合、結婚・離婚した場合など、生活状況が変わったときは、在留資格の変更が必要な場合があります。不適切な在留資格のまま滞在を続けると、更新不許可や在留資格取消のリスクがあります。

(3) 必要書類を早めに準備する

在留資格の更新・変更には、多くの書類が必要です。母国から取り寄せる書類もあるため、余裕を持った準備が重要です。

(4) 専門家に相談する

制度が変わるタイミングだからこそ、不安なことがあれば専門家に相談してください。自己判断で手続きを進めると、思わぬトラブルにつながることがあります。


5. 共生社会実現に向けて:私たちができること

今回の基本計画は、「適正に滞在し、社会に貢献する外国人を歓迎し、支援する」という明確なメッセージを含んでいます。同時に、「ルールを守らない者には厳格に対応する」という姿勢も示されています。

企業にとって、外国人材は今や欠かせない存在です。人材不足が深刻化する中、優秀な外国人材を確保し、長期的に定着させることが、企業の成長戦略の鍵となります。

そのためには、単に法令を遵守するだけでなく、外国人従業員が安心して働ける環境を整え、生活面でもサポートする姿勢が求められます。

在日外国人の皆さまにとっても、日本での生活を安心して続けるためには、在留資格の適正管理、ルールの遵守、そして必要なときに適切な支援を受けることが大切です。

私たちは、企業と外国人の双方が安心して手続きを進められるよう、専門的なサポートを提供しています。ビザ申請・在留資格に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。


6. まとめ

「第2次出入国在留管理基本計画」の公表は、今後の外国人政策の方向性を示す重要な転換点です。

企業の皆さまへ

  • 外国人従業員の在留資格管理を徹底してください
  • JESTA導入など新制度への対応準備を進めてください
  • 共生社会実現に向けた社内体制を整備してください

在日外国人の皆さまへ

  • 在留期間を確認し、早めの更新準備を始めてください
  • 在留資格と生活状況が一致しているか確認してください
  • 不安なことがあれば、専門家に相談してください

制度が変わる今こそ、正確な情報と適切な手続きが、安心して日本で生活し、働き続けるための鍵となります。

私たちは、皆さまが安心して日本での生活を続けられるよう、これからもサポートを続けてまいります。


出典
Yahoo!ニュース(テレビ朝日系ANN)
「外国人政策の基本方針公表 入管庁厳格化に」
https://news.yahoo.co.jp/articles/944319de119b97685394a2d6fd2f9736b24d9c44