介護分野での外国人材受け入れが進む中、注目すべき制度として「介護福祉士国家試験の特例措置」があります。2025年現在、この制度は既に8,000人以上の外国人に適用されており、今後の介護業界に大きな影響を与える要素となっています。
この特例措置は、介護福祉士養成施設を卒業した者が国家試験に不合格であっても、一定期間「介護福祉士」として登録・就労が可能となる仕組みです。具体的には、最大5年間の実務経験を経て、正式に資格を取得することが可能とされています。
この制度の背景には、以下のような要因があります: ・介護人材の深刻な不足 ・外国人留学生にとって高いハードルとなる日本語能力 ・介護福祉士資格の取得率の低迷
厚生労働省のデータによれば、2017年度から2024年度までに養成施設を卒業した外国人留学生8,346人のうち、国家試験に合格したのは3,284人にとどまり、5,000人以上が特例対象者として働いている実態があります。
特例制度は当初、2021年度卒業者までを対象とした時限措置でしたが、現在は2026年度卒業者までに延長されています。制度としての恒久化はなされておらず、今後の議論の行方が注目されます。
【企業が抱える現実的なジレンマ】
外国人スタッフの採用を検討している介護事業者の中には、次のような声が上がっています:
・「人手が足りないから特例制度を活用したい」 ・「国家資格の価値が下がるのではないか」 ・「特例で雇った場合、在留資格の更新や永住申請に支障はないのか」
実際には、特例制度下でも「介護」や「特定技能」などの在留資格は取得可能であり、一定の就労年数や条件を満たせば、定住者資格や永住申請も視野に入れることができます。
とはいえ、形式的な雇用だけで済ませるのではなく、次のような取り組みが求められます:
✅ 日本語学習や国家試験合格に向けた社内支援体制の構築
✅ 介護現場でのOJTや職場内研修による技術・知識の定着
✅ 外国人職員のキャリア形成を見据えた長期的人材育成戦略
私自身、行政書士として多数の介護事業者の方々と連携し、外国人雇用に関わる在留資格手続、教育・研修制度の整備支援を行ってまいりました。制度を単なる「人手不足対策の抜け道」と捉えるのではなく、将来に向けた人材育成の一環として捉える視点が不可欠です。
特例制度の今後については、継続か廃止か、さらなる条件の見直しが検討される可能性もあります。だからこそ今、制度の正しい理解と対応方針の明確化が必要です。
介護分野での外国人材の活用を検討中の事業者様、また現在雇用している企業様におかれましては、「自社にとっての最適な活用方法は何か」「将来的な人材戦略とどう整合するか」を見極めることが重要です。
ご不安な点があれば、ぜひお気軽にご相談ください。現場の実情に即した制度解説と、実務に即した対応策をご提案させていただきます。