2024年7月、横浜地裁で下されたある判決が、外国人雇用に携わる企業関係者の間で大きな話題を呼びました。

群馬県にある派遣会社「M」が、在留資格に基づかない外国人労働者を就労させていたとして、入管難民法違反で有罪となったのです。

この事件は、外国人雇用に関わるすべての企業にとって、決して他人事ではありません。

本記事では、事件の概要を踏まえつつ、外国人労働者を雇用する企業が絶対に守るべき3つのルールを、行政書士の視点からわかりやすく解説します。


■ 実際に起きた「不法就労」の判決内容

事件は、派遣会社の代表が、在留資格に基づかない外国人を倉庫作業員として就労させていたというものです。

横浜地裁は以下の判決を下しました。

  • 派遣会社に対し、罰金100万円
  • 代表者個人に対し、懲役1年(執行猶予3年)+罰金100万円
  • さらに会社預金債権150万円相当の没収命令

裁判官は「悪質で軽率」と指摘し、「在留資格などを確認せず、漫然と不法就労を継続していた」と強い非難の言葉を述べました。

この事案で注目すべきは、明確な悪意よりも“確認の怠り”が大きな責任に繋がった点です。


■ そもそも「不法就労」とは?

不法就労とは、以下のような状態で外国人を働かせることを指します。

  1. 在留資格を持たずに働いている
  2. 許可された在留資格の範囲外で働いている
  3. 就労が一切認められていない在留資格で働いている(例:観光ビザ)

企業側に悪意がなくても、こうした状態に気づかず雇用を続けると、不法就労助長罪に問われる可能性があります。


■ 外国人雇用で企業が守るべき3つのルール

1. 在留カードと資格内容の“両方”を確認する

「在留カードを提示されたからOK」では不十分です。
重要なのはカードの内容と、実際の業務が合っているかどうか。

たとえば、技術・人文知識・国際業務(通称「技人国ビザ」)を持つ外国人が、工場や倉庫などの現場作業をするのは資格外活動になります。

在留資格が「就労可能」でも、その範囲は極めて限定的です。

確認ポイント:

  • 在留資格の種類
  • 資格で許可されている業務内容
  • 資格外活動許可の有無(特に留学生など)

2. 雇用契約と業務内容の整合性を文書で残す

万が一の調査やトラブル時に備えて、就労内容が在留資格の範囲内であることを示す書面を整えておくことが重要です。

特に以下の点は必須です。

  • 雇用契約書の明記(職種・業務内容)
  • 業務マニュアルや職務記述書
  • 労働時間や勤務地の記録

書面の整備は「知らなかった」を防ぐだけでなく、企業の法的リスクを減らす意味でも極めて重要です。

3. 派遣・委託の場合も責任は発生する

「直接雇用していないから大丈夫」と考える企業もありますが、派遣や業務委託でも実態が“労働”に該当すれば同様の責任を問われます。

今回の事件のように、派遣元の会社が外国人の在留資格を正しく管理していなかった場合、派遣先の企業も調査対象になることがあります。

受け入れ企業側も、派遣社員の在留資格を確認する義務があるという認識を持つべきです。


■ 「知らなかった」では済まされない時代に

日本で働く外国人の数は年々増加し、企業にとっては人材確保の重要な選択肢となっています。

しかし同時に、入管法や在留資格のルールは年々厳格化し、違反時の罰則も重くなっています。

実際、ここ数年で「不法就労助長罪」に問われた企業数は増加傾向にあり、経営者や人事担当者が法令を正しく理解していなかったことが原因とされるケースも多いです。


■ 安心して外国人を雇用するために、行政書士を活用しよう

行政書士は、在留資格の確認や入管手続きの専門家です。

当事務所でも、以下のようなサポートを行っています。

  • 外国人雇用前の在留資格確認
  • 資格外活動許可や変更申請の代行
  • 就労内容と在留資格の適合診断
  • 外国人雇用全体に関するコンサルティング

「何を確認すればいいのか分からない」
「この雇用は法律的に大丈夫か?」
そんなお悩みをお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。

トラブルになる前に、しっかりと制度を理解して活用することが、企業と外国人双方の安心につながります。


まとめ

不法就労は、企業にとって「知らなかった」では済まされない重大な法的リスクです。

だからこそ、

  1. 在留資格と実務の確認
  2. 文書による業務管理
  3. 外注・派遣先でも適正確認

この3つの基本ルールを守ることが、外国人雇用の第一歩です。

外国人の雇用を通じて、持続可能な経営を目指すために、制度の理解とプロの活用をぜひご検討ください。