1. はじめに:映画のような「不法上陸事件」が現実に
    今年2月、博多港に停泊していたクルーズ船からモンゴル国籍の男性2人が、係留ロープを伝って上陸し、そのまま逃走するという異例の事件が発生しました。彼らは入国審査を受けず、パスポートも船内に残したまま逃げ出し、4ヶ月以上にわたり所在不明に。そして6月下旬、ようやく出頭し逮捕されました。

この事件は一見、観光客の突発的な行動に思えるかもしれません。しかし、外国人を雇用する企業や在留支援を行う専門家にとっては、深刻な「出入国管理の盲点」を示唆する出来事でもあります。

  1. なぜ企業にとって他人事ではないのか?
    「うちは関係ない」と思われるかもしれません。ですが、こうした不法滞在者がアルバイトや短期労働などの形で“合法に見える”就労を始めてしまうケースは珍しくありません。そして知らずに雇ってしまった企業が、出入国管理法違反の責任を問われることもあるのです。
  2. 出入国管理法と企業の義務
    日本の出入国管理法では、外国人を雇用する際、雇用主には以下のような義務があります。
    ・在留カードの確認と記録保持
    ・在留資格に適合した業務内容かの確認
    ・変更があった場合の入管への届出

これらを怠ると、企業にも罰則や業務停止命令が科される可能性があります。

  1. 偽装や不法就労の手口は年々巧妙に
    パスポートや在留カードの偽造は年々巧妙化しています。表面だけでなくICチップの読み取りまで確認しなければ、違法滞在者を見抜けないケースもあります。また、一見合法な在留資格でも、就労が許可されていない場合もあるため、雇用前の「詳細確認」が極めて重要です。
  2. 「観光客」が就労する危険性
    今回のモンゴル人2名は「観光目的で来た」と話しているとのこと。しかし観光ビザ(短期滞在)では就労は一切認められていません。それにもかかわらず、実際には観光客が裏ルートで働く事例は後を絶ちません。
  3. 行政書士がサポートできること
    私たち行政書士は、企業が合法的に外国人を雇用できるよう、在留資格の取得・更新・変更の手続きだけでなく、社内体制の整備やリスク管理もサポートしています。採用の段階から相談いただければ、不必要なトラブルを未然に防ぐことができます。
  4. 企業がすべき3つの対策
    ① 雇用前の在留資格チェックをICチップまで行う
    ② 雇用後も在留カードの期限や更新を定期確認
    ③ 外国人従業員との情報共有と定期面談の実施
  5. 今回の事件から得られる教訓
    「想定外の行動」はどんな環境でも起こりえます。重要なのは、企業として「知らなかった」「気づかなかった」で済ませず、リスク管理の目を持つことです。
  6. 在日外国人本人にも影響する
    不法滞在者が増えることで、正当に在留している外国人に対する社会的な偏見が強まる恐れがあります。全体としての在留制度の信頼を守るためにも、1社1人の雇用から正しい対応が求められます。
  7. まとめ:出入国管理の現実を直視し、備える企業に
    クルーズ船からの不法上陸という衝撃的な事件は、出入国管理制度の盲点を突いた行動でした。外国人を雇用する企業として、今こそ出入国管理の「現実」に目を向け、正しい雇用と継続的な管理を行うことが求められています。

少しでも不安がある企業経営者・人事担当者の皆様は、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。適法かつ安心な外国人雇用をサポートいたします。