目次

  1. はじめに:令和8年7月24日関係閣僚会議で決定された内容とは
  2. 在留管理DXとは何か──マイナンバー連携がもたらす変化
  3. 在留資格審査の厳格化──各在留資格別の注意点
  4. 永住許可・帰化要件の見直し
  5. 不法滞在者ゼロプランと企業リスク
  6. 企業が今すぐ取り組むべき5つの対策
  7. まとめ:制度変更を機に、真の外国人雇用戦略を構築する

1. はじめに:令和8年7月24日関係閣僚会議で決定された内容とは

令和8年(2026年)7月24日、「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議(第3回)」が開催されました。この会議では、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」の進捗状況が報告され、今後の取組の方向性が示されました。

この総合的対応策は、令和8年1月23日に決定されたもので、外国人材の受入れ拡大と適正な在留管理の両立を目指す、政府の包括的な方針です。

主なポイント

  • 出入国在留管理のデジタル化(在留管理DX)
  • 在留資格審査の厳格化
  • 永住許可要件の見直し
  • 不法滞在者対策の強化
  • 在留申請のオンライン化

これらの施策は、令和9年度(2027年度)から令和11年度(2029年度)にかけて、段階的に実施される予定です。

外国人を雇用している企業、あるいは今後雇用を検討している企業にとって、この制度変更は看過できないものです。本記事では、行政書士の視点から、企業実務に直結する重要ポイントを徹底解説します。


2. 在留管理DXとは何か──マイナンバー連携がもたらす変化

2-1. マイナンバーと在留情報の連携開始

令和9年(2027年)3月以降、出入国在留管理庁と各行政機関との間で、公共サービスメッシュを活用した情報連携が本格化します。

連携される情報

  • 国民健康保険料・国民年金保険料の納付情報
  • 地方税の課税情報
  • 医療保険の被保険者資格情報
  • 出入国関連情報
  • 在留資格情報

さらに今後、国税・地方税情報も在留審査・納付勧奨に活用する仕組みが検討されています。

2-2. 企業への影響

これまで在留資格の更新申請では、申請者が自ら各種証明書を取得して提出する必要がありました。しかし今後は、行政機関同士が裏側で情報を照合するため、申請書に記載された内容と実態が合っているかが自動的にチェックされます。

メリット

  • 申請書類の簡素化
  • 手続の迅速化
  • 窓口での待ち時間削減

デメリット(リスク)

  • 不正確な情報や虚偽記載が即座に発覚
  • 社会保険未加入、税金滞納などが在留審査に直結
  • ごまかしが一切効かなくなる

2-3. 特定在留カード(マイナンバーカード一体化)の原則取得

在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード」の原則取得も進められています。オンライン取得のためのシステム改修も予定されており、利便性は向上します。

しかし同時に、外国人の社会的活動(税務、雇用、医療、教育など)がすべてマイナンバーに紐づけられることを意味します。企業の雇用実態が常に可視化される状態になります。


3. 在留資格審査の厳格化──各在留資格別の注意点

3-1. 「経営・管理」

変更内容

  • 新たな許可基準に基づく厳格な審査が実施中(令和8年3月~)
  • 改正前から在留している者の取扱い等がQ&Aに掲載(令和8年6月)

企業への影響

  • 起業家や経営者として来日する外国人の審査が厳しくなる
  • 事業の実態、事業所の存在、事業計画の妥当性などが精査される

3-2. 「技術・人文知識・国際業務(技・人・国)」

変更内容

  • 派遣形態で就労する外国人に関する審査の強化(令和8年3月~)
  • 主に日本語能力を用いる業務に従事する場合の審査の強化(令和8年4月~)

企業への影響

  • 派遣先での実際の業務内容まで精査される
  • 「翻訳・通訳」として申請しながら単純労働をさせているケースは不許可の可能性
  • 日本語能力を主とする業務(接客、営業など)についても、本当に大卒レベルの専門性が必要かが問われる

3-3. 「留学」(資格外活動)

変更内容

  • 日本語教育機関と連携した資格外活動の実態把握・指導の開始(令和8年4月~)

企業への影響

  • 留学生アルバイトの週28時間制限の遵守が厳格にチェックされる
  • 違反が発覚すれば、留学生本人の在留資格取消+企業の不法就労助長罪のリスク
  • 留学生アルバイトに依存したビジネスモデルは持続不可能に

3-4. 「企業内転勤」

変更内容

  • 厳格な審査のため申請書類の見直し等を実施(令和8年4月~)

企業への影響

  • 海外拠点から日本拠点への転勤者に関する審査が厳しくなる
  • 転勤の必然性、職務内容、給与水準などが詳細に審査される

4. 永住許可・帰化要件の見直し

4-1. 永住許可ガイドラインの改正

現状の課題

  • 「社会との結びつきが他の在留資格に比して高いにもかかわらず、許可要件が緩やか」との指摘
  • 在留期間「5年」を有していれば要件を満たすとされていた経過措置の見直し

今後の方向性

  • 納税状況の精査強化
  • 社会保険加入状況の厳格チェック
  • 犯罪歴の重点確認

企業への影響

  • 長期雇用したい外国人従業員がいる場合、日頃から適正な雇用管理が必要
  • 給与支払い、社会保険加入、税金納付の徹底が、将来の永住許可取得を左右する

4-2. 帰化要件との整合性

永住許可の在留要件が「10年以上」であるのに対し、帰化の住所要件は「5年以上」という不整合が指摘されています。今後、帰化要件の厳格化も検討される見込みです。


5. 不法滞在者ゼロプランと企業リスク

5-1. デジタル技術を活用した摘発強化

令和9年度以降、AIやビッグデータを活用し、不法滞在者情報の収集・分析が強化されます。不法滞在の可能性が高い人物を事前に特定し、効率的に摘発する体制が整います。

5-2. 企業が巻き込まれるリスク

不法就労助長罪

  • 知らずに不法滞在者を雇用した場合でも、企業は刑事責任を問われる可能性がある
  • 「知らなかった」は免責理由にならない

対策

  • 在留カード番号を出入国在留管理庁のWebサイトで確認
  • 雇用後も定期的に在留期限をチェック
  • 更新申請が適切に行われているかをフォロー

6. 企業が今すぐ取り組むべき5つの対策

6-1. 外国人従業員の在留状況を全数チェック

自社で雇用している外国人従業員全員の在留カード情報を一覧化します。

チェック項目

  • 氏名
  • 在留資格
  • 在留期限
  • 資格外活動許可の有無
  • 雇用開始日
  • 現在の職務内容

在留期限が3か月以内に迫っている従業員については、更新申請のスケジュールを確認します。

6-2. 職務内容と在留資格の整合性確認

従業員の実際の業務内容と、在留資格で認められている活動内容が一致しているかを確認します。

不一致がある場合は、業務内容を変更するか、在留資格変更許可申請を行う必要があります。

6-3. 社会保険・税務のコンプライアンス強化

確認事項

  • 雇用保険、健康保険、厚生年金への加入状況
  • 源泉徴収の実施状況
  • 年末調整の適切な実施
  • 住民税の特別徴収

マイナンバー連携により、これらの情報が在留審査に直結します。未加入・未納は即座に在留資格の不許可につながるリスクがあります。

6-4. 雇用契約書と労働実態の一致

雇用契約書に記載された労働条件と、実際の労働実態が一致しているかを確認します。

チェック項目

  • 労働時間(所定労働時間、残業時間)
  • 休日・休暇
  • 賃金(基本給、各種手当、残業代)
  • 就業場所
  • 職務内容

契約書と実態に乖離がある場合、在留審査で虚偽申請とみなされるリスクがあります。

6-5. 外部専門家との連携体制構築

行政書士、社会保険労務士、税理士など、外部専門家との連携体制を整えておくことが重要です。

専門家活用のメリット

  • 最新の制度変更情報を入手できる
  • 個別事案に応じた適切なアドバイスを受けられる
  • トラブル発生前に予防策を講じられる
  • 申請手続を専門家に委任することで、社内リソースを節約できる

7. まとめ:制度変更を機に、真の外国人雇用戦略を構築する

令和8年7月24日の関係閣僚会議で示された方針は、日本の在留管理を根本から変えるものです。

重要ポイントの再確認

  1. マイナンバー連携で実態がすべて可視化される
  2. 在留資格審査が厳格化され、ごまかしが効かなくなる
  3. 留学生アルバイトの週28時間制限が厳しくチェックされる
  4. 社会保険・税務のコンプライアンスが在留審査に直結する
  5. 不法就労助長罪のリスクが高まる

一見すると、企業にとって負担が増えるように感じられるかもしれません。しかし私は、この流れを前向きに捉えています。

なぜなら、ルールを守っている企業が正当に評価される時代になるからです。

これまでは、社会保険をごまかし、労働法を無視し、外国人を使い捨てにするような企業も、表面的には問題なく外国人を雇用できてしまいました。しかし今後は、そうした企業は淘汰されます。

一方、真っ当に経営している企業は、安定して外国人材を確保し続けることができます。従業員も安心して働けるため、定着率が上がり、企業の成長につながります。

外国人雇用は、その人の人生に寄り添う仕事です。

企業がそうした姿勢で外国人と向き合えば、従業員は高いモチベーションで働き、組織に貢献してくれます。

準備は、今から始めるべきです。令和9年、令和10年と、制度は段階的に変わっていきます。その時になって慌てるのではなく、今のうちに体制を整え、従業員との信頼関係を築き、コンプライアンスを徹底しておくこと。それが、数年後の企業の競争力を左右します。

当事務所では、外国人雇用に関する包括的なサポートを提供しております。在留資格申請の代行はもちろん、雇用管理体制の構築支援、コンプライアンスチェック、定期的な情報提供など、企業様の外国人雇用を伴走支援いたします。

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