2026年7月11日、出入国在留管理庁が外国人の不法就労対策を大幅に強化する方針を発表しました。この動きは、外国人材を雇用する、またはこれから雇用を検討している全ての企業にとって、経営上の重大なリスク管理課題となります。本記事では、行政書士の視点から、今回の方針変更の内容と企業が取るべき対応策について詳しく解説します。
1. 不法就労助長罪とは?基礎知識の整理
不法就労助長罪の定義
不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2に規定されている犯罪です。具体的には、以下の行為が該当します:
・在留資格を持たない外国人を雇用すること
・就労が認められていない在留資格で外国人を働かせること
・認められた範囲を超えて外国人を就労させること
・不法就労をあっせんすること
従来の問題点
これまで、不法就労助長罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」でした。しかし、多くの業種において事業許認可の欠格事由は「拘禁刑以上」とされていたため、罰金刑のみで済んだ場合は、同じ業種で事業を継続することが可能でした。
この法の抜け道が、悪質な事業者による不法就労の繰り返しを許してしまっていたのです。
2. 今回の方針変更の3つの重要ポイント
ポイント①:法定刑の大幅引き上げ(2027年4月施行)
来年4月から、不法就労助長罪の法定刑が以下のように引き上げられます:
【現行】
・拘禁刑:3年以下
・罰金:300万円以下
【改正後】
・拘禁刑:5年以下
・罰金:500万円以下
この変更により、不法就労に対する刑事罰が大幅に厳格化されます。
ポイント②:欠格事由への追加
出入国在留管理庁は、各業種を所管する省庁に対し、事業許認可における「欠格事由」として不法就労助長罪の処分歴を追加するよう要請する方針です。
これにより、不法就労助長罪で有罪になった場合、罰金刑のみであっても一定期間は同じ業種での事業ができなくなります。これまでの「拘禁刑以上」という基準から大きく変わる点です。
ポイント③:特定業種への重点的な取り締まり強化
特に以下のような業種が対象として注目されています:
・自動車解体ヤード業(廃棄物処理法/環境省、自動車リサイクル法/経産省、古物営業法/警察庁)
・建設業
・製造業
・農業
・飲食業
入管庁は、不法就労の事例が多い業種について実態調査を行い、関係省庁と協議の場を設ける予定です。
3. 「不法滞在者ゼロプラン」とは?
今回の方針は、高市内閣が推進する「不法滞在者ゼロプラン」の一環です。このプランは、以下の施策を柱としています:
・不法滞在者の摘発強化
・不法就労の温床となっている業種への重点的な取り締まり
・雇用主側の責任追及の厳格化
・在留管理システムの高度化
政府は、外国人材の適正な受け入れと、不法就労・不法滞在の撲滅を同時に進める方針を明確にしています。
4. 企業が直面するリスクとは?
リスク①:刑事罰
不法就労助長罪で有罪になれば、法人の場合は罰金刑、個人(代表者や人事担当者)の場合は拘禁刑または罰金刑が科せられる可能性があります。
リスク②:事業許可の取り消し・停止
今回の方針により、罰金刑のみであっても、一定期間は同じ業種での事業ができなくなります。これは事業継続に直結する重大なリスクです。
リスク③:社会的信用の失墜
不法就労で摘発されれば、企業名が報道される可能性があります。ブランドイメージの低下、取引先との関係悪化、採用活動への悪影響など、長期的なダメージは計り知れません。
リスク④:「知らなかった」は通用しない
不法就労助長罪は、雇用主に故意や過失がなくても成立する場合があります。つまり、「在留資格を確認していなかった」「知識がなかった」という理由は、法的な免責事由になりません。
5. 企業が今すぐ実施すべき5つの対策
対策①:在留カードの確認を徹底する
採用時には必ず在留カードの原本を確認してください。確認すべきポイントは:
・在留資格の種類(就労可能な資格か?)
・在留期限(有効期限内か?)
・就労制限の有無(裏面に記載)
・資格外活動許可の有無(留学生・家族滞在などの場合)
偽造カードも増えているため、入管庁の「在留カード等番号失効情報照会」を活用することをお勧めします。
対策②:定期的な在留期限管理システムの構築
在留期限が切れた外国人を雇用し続けることは、不法就労助長罪に該当します。人事部門で在留期限を一元管理し、更新時期の3か月前にはアラートが出る仕組みを作りましょう。
対策③:就労制限の正確な把握
在留資格によっては、就労できる業種や職種が制限されています。例えば:
・技術・人文知識・国際業務:専門的な業務に限定
・特定技能:特定の12分野に限定
・留学:原則週28時間以内(資格外活動許可が必要)
雇用予定の業務内容が、当該外国人の在留資格で認められているかを、必ず確認してください。
対策④:人事担当者への教育研修の実施
外国人雇用に関わる担当者全員が、入管法の基礎知識を持つことが重要です。社内研修を定期的に実施し、以下の内容を徹底しましょう:
・在留資格の種類と就労制限
・在留カードの見方
・不法就労助長罪のリスク
・ハローワークへの届出義務
対策⑤:専門家への相談体制の確立
入管法は頻繁に改正され、実務上の判断が難しいケースも多くあります。顧問の行政書士や社会保険労務士など、専門家と連携できる体制を整えておくことをお勧めします。
6. 在留資格別の注意点
技術・人文知識・国際業務
最も一般的な就労ビザですが、単純労働は認められていません。例えば、エンジニアとして採用した外国人に、工場での組立作業をさせることは違法です。
特定技能
特定の16分野(介護、ビルクリーニング、製造業など)に限定されています。他の業種での就労はできません。
留学
原則として就労は認められていませんが、資格外活動許可を得れば週28時間以内のアルバイトが可能です。ただし、風俗営業関連の業種は禁止されています。
家族滞在
就労ビザを持つ外国人の配偶者や子どもに与えられる資格です。就労するには資格外活動許可が必要で、週28時間以内という制限があります。
永住者・日本人の配偶者等・定住者
これらの資格を持つ外国人には就労制限がありません。どのような業種・職種でも就労可能です。
7. よくある違反事例
事例①:在留期限切れ
在留期限が過ぎているのに気づかず、そのまま雇用を継続してしまうケース。人事担当者の管理不足が原因です。
事例②:資格外活動
留学生を週28時間を超えて働かせてしまうケース。特に繁忙期には注意が必要です。
事例③:就労不可の在留資格
短期滞在(観光ビザ)や家族滞在(資格外活動許可なし)の外国人を雇用してしまうケース。
事例④:業務内容の不一致
技術・人文知識・国際業務の資格で、単純作業をさせてしまうケース。採用時の業務内容と実際の業務が異なる場合に発生します。
8. まとめ:これからの外国人雇用に必要な視点
今回の不法就労助長罪の厳格化は、企業にとって厳しい内容です。しかし一方で、この動きは外国人労働者の権利保護と、労働市場の健全化につながる重要な施策でもあります。
グローバル人材の活用は、日本企業の成長戦略に欠かせません。だからこそ、正しい知識と適切な手続きに基づいた、持続可能な雇用体制を構築することが求められています。
「知らなかった」では済まされない時代になりました。今こそ、外国人雇用のコンプライアンス体制を見直す絶好の機会です。
当事務所では、外国人雇用に関する総合的なサポートを提供しています。在留資格の確認、ビザ申請の代行、社内研修の実施など、企業様のニーズに合わせたサービスをご提案いたします。
ご不明な点、ご不安なことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
元記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/314c00bef8730af18d2969aa5f706b042ff93e43
