はじめに
2026年7月28日、出入国在留管理庁は、外国人の永住許可要件を厳しくするガイドライン改定案について、新たな運用方針を発表しました。昨日お伝えした「日本人世帯の平均を上回る年収水準」という要件に続き、今回は扶養家族が5人以上いる場合、年収基準が人数に応じて加算されるという具体的な運用が明らかになりました。
この続報は、永住申請を検討している外国人、特に扶養家族が多い方々にとって、大きな影響を与える内容です。さらに、控除枠の拡大を狙った節税目的で、国外の親族を扶養家族に入れている場合、永住要件の年収基準も上がるため、制度の正しい運用が求められます。
本記事では、今回の改定内容の詳細と、節税目的の扶養登録への影響、そして今後の対応策について解説します。
今回の改定内容の詳細
1. 扶養家族5人以上で年収基準が加算される
改定案では、申請者の世帯人数に応じた年収水準を設定するとしています。特に、扶養家族が5人以上いる場合、世帯人数に応じた年収水準額に「生活費などの増加分を加算する」という方針が示されました。
これは、扶養家族が多い世帯ほど、必要な年収額が高くなることを意味します。
2. 外国に住む親族も世帯人数にカウント
注目すべきは、申請者が扶養する親族は同居していなくても世帯人数にカウントされる、つまり外国に住む親族も含むとされたことです。
これは、母国に親や子どもを残している外国人にとって、大きな影響があります。日本で暮らしていなくても、扶養していれば世帯人数にカウントされ、必要な年収額が増える可能性があります。
3. 家族滞在などの資格外活動収入は合算されない
一方で、申請者の年収と、同じ世帯の家族の年収を合算した額で見るとされていますが、家族滞在など就労を目的としない在留資格の家族が資格外活動の許可を受けてアルバイトなどで得た収入は合算しないとされました。
これは、配偶者や子どもがアルバイトをしていても、その収入は年収基準の計算に含まれないということです。
4. 10月1日改定後、今年4月の申請分にさかのぼって適用
さらに重要なのは、新たな年収水準については、10月1日のガイドライン改定後、今年4月の申請分にさかのぼって適用されるという点です。
これは、すでに申請準備を進めていた方々にとって、予期せぬ変更となります。
節税目的の扶養登録への影響──「両刃の剣」となる可能性
控除枠の拡大を狙った扶養登録とは
日本の税制では、扶養家族が多いほど、所得税や住民税の控除額が増えます。そのため、実際には扶養の必要性が低い親族(例えば、母国で自立して生活している成人した兄弟や、収入のある親族など)を扶養家族として登録し、控除枠を拡大することで、税負担を軽減する手法が存在します。
こうした節税目的の扶養登録は、税務上は合法である場合もありますが、実態に基づかない扶養登録は、税務調査で問題視されるリスクもあります。
永住申請への影響:年収基準が上がる
今回の改定により、控除枠の拡大を狙った節税目的で、国外の親族を扶養家族に入れている場合、永住要件の年収基準も上がることになります。
つまり、税務上の控除を受けるために扶養家族を増やしていた場合、永住申請時には、その扶養家族も世帯人数にカウントされ、必要な年収基準が引き上げられるという、いわば「両刃の剣」になるわけです。
制度の正しい運用が求められる
制度は正しく運用する必要があります。扶養家族の登録は、実態に基づいて行うべきであり、節税目的だけで行うべきではありません。
特に、永住申請を検討している場合、扶養家族の登録が実態に基づいているかどうかを、改めて確認する必要があります。
今回の改定が影響を与える対象者
1. 扶養家族が多い方
特に、母国に親や子どもを残している方、日本で大家族を形成している方は、必要な年収額が大幅に増える可能性があります。
2. 配偶者や子どもがアルバイトをしている世帯
家族滞在の配偶者や子どもがアルバイトをしていても、その収入は合算されません。そのため、世帯全体の収入は十分でも、申請者本人の年収が基準に達しない場合、申請が困難になります。
3. すでに申請準備を進めていた方
今年4月以降の申請分にさかのぼって適用されるため、すでに書類を準備していた方、申請予定だった方は、改めて要件を確認する必要があります。
4. 節税目的で扶養家族を増やしている方
控除枠の拡大を狙って、実態に基づかない扶養家族を登録している場合、永住申請のハードルが上がります。扶養の実態を整理する必要があります。
今後の対応策:何ができるのか
1. 自分の世帯人数と年収基準を正確に把握する
まず、自分の扶養家族が何人いるのか、そのうち外国に住んでいる親族は何人いるのかを正確に把握しましょう。そして、必要な年収基準がどのくらいになるのかを確認することが第一歩です。
2. 扶養家族の実態を整理する
外国に住む親族を扶養している場合、扶養の実態を証明する書類(送金記録など)が求められる可能性があります。また、扶養の必要性が低い場合、または節税目的で登録している場合は、扶養から外すことも一つの選択肢です。
3. 年収を引き上げる方法を検討する
もし、現在の年収が基準に達しない場合、以下のような方法が考えられます。
- 役員報酬の引き上げ(経営者の場合)
- 昇給交渉(会社員の場合)
- 副業や資格取得による収入増
ただし、急激な年収の変動は、審査でマイナスに働く可能性もあるため、計画的な対応が必要です。
4. 申請のタイミングを見直す
今年4月以降の申請分が対象となるため、すでに申請を予定していた方は、改めて要件を確認し、申請のタイミングを見直すことが重要です。
5. 専門家に相談する
今回の改定は、具体的な年収基準や運用の詳細がまだ明らかになっていない部分も多いです。個別の状況に応じた最善の戦略を立てるためには、専門家への相談をお勧めします。
なぜ今、永住許可要件が厳格化されるのか
政府の方針:「悪質な永住者」への対応
政府は今年1月に定めた外国人政策の総合的対応策で、「永住許可後に要件を満たさなくなる場合がある」とし、そうした「悪質な永住者」を容認し続けると、その他の永住者への偏見につながる恐れがあると強調しました。
そして、独立生計要件と国益要件を厳格化する方針を明記したのです。
制度の背景にある意図
永住許可は、在留資格の中でも最も安定した地位です。就労制限がなく、在留期間の更新も不要です。そのため、永住許可を取得した後、経済状況が悪化しても、在留資格が取り消されることはほとんどありませんでした。
政府は、こうした「永住後に生活保護を受給する」「税金や社会保険の滞納が続く」といったケースを問題視し、今回の厳格化に踏み切ったと考えられます。
制度の先にある「人」を見る
今回の改定は、政策的には一定の合理性があるかもしれません。しかし、制度の変更が、真面目に働き、納税し、雇用を生み出し、地域に貢献してきた外国人にどう影響するのか。その点についても、私たちは考える必要があります。
制度は正しく運用されるべきです。しかし、その制度がどのように人々に影響を与えるのかを、常に意識する必要があります。
外国人雇用企業の経営者・人事担当者へ
もし、あなたの会社で働く外国人従業員が永住申請を検討している場合、今回の改定は大きく影響する可能性があります。
特に、以下のような方は注意が必要です。
- 扶養家族が多い従業員
- 配偶者や子どもが家族滞在でアルバイトをしている従業員
- 年収が基準ギリギリの従業員
企業としてできることは、以下のような点です。
- 昇給や昇格の検討
- 役職手当や家族手当の見直し
- 永住申請に向けたサポート体制の整備
外国人従業員の定着は、企業の成長にもつながります。永住申請をサポートすることは、企業にとってもメリットがあります。
まとめ
今回の永住許可要件の厳格化は、外国人にとって大きな影響を与える改定です。特に、扶養家族が5人以上いる場合の年収基準加算、外国在住親族のカウント、遡及適用、そして節税目的の扶養登録への影響という点は、現場に大きな影響を与えます。
制度は正しく運用する必要があります。扶養家族の登録は、実態に基づいて行うべきであり、節税目的だけで行うべきではありません。
しかし、制度が変わったからといって、諦める必要はありません。まずは、自分の状況を正確に把握し、必要な対策を検討することが大切です。
もし、永住申請を検討している方、または扶養家族が多い方で不安を感じている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。扶養の実態を整理し、制度を正しく理解した上で、最善の方法を一緒に考えていきましょう。
記事URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/545428823e9fec8a91058f37a94d7639c0be532d
